人生たらたら

書きたいことを書くだけのブログ

断崖

 

 

 

ぼろぼろの車輪が動いている。色々と欠けていて細部にいたるまで劣化や損傷している、でも確かにその車輪は回っている。部分的に擦れて回転が鈍くなりながらも、ゆっくりとやかましい音を立てながらも、削られた破片が少しずつ地面に溜まっていこうとも、確かにそこで動いている。動力ももう微かなちっぽけな光。でも着実に、時を刻まれていくものと一緒に、動いている。何らかの外的接触がほんの数ミクロンほどもあれば急激にバランスを崩す。元々の歪みの範疇から零れ落ちていく。ほんの僅か。髪の毛一本ほど。糸くず、埃、塵、それほどのものさえ干渉した時点で荒波となり錆として凝固し周囲の空気をも一変させる。たったひとつの綻びが大きな溝となり地脈となり意思を削る本質と化す。小さな触媒から長き期間を用して一歩ずつ元の高さへと戻っていく。無意識に。元の場所へ歩んでいく。計算され貼り巡らされた何枚もの車輪が再度聞き苦しい音を経て、いつ止まるかも分からない圧迫感と一種の希望、解放をも胸に刻み込みながら、動き出す。何度でも。まるで追い求めるように。元の場所で。まるで何者かに手を下していてほしいかのように。今は到底想像もできない、されども確実に存在している終わりへと向かって。見えない場所に向かっていく感覚は形容しがたいほど虚像。確かにある。だが確かにない。また一周、また一周。使命でもない、義務でもない。また一周。ましてや必要ですらない。また一周。何かを探求している。また。その次が来ないかもしれない。また。まだ続く。続いてしまう。しまう?しまっている?また、また、また、また。形も先のも見えない何者かに。覆いつくされ。飲み込まれていく。