とうとうお別れの時が訪れてしまった。何度も倒れては無理矢理起き上がらせ、また倒れては渾身のビンタで力業で目を覚めさせ、楽しいときも苦しいときも健やかなるときも病気のとき…病気にはなってないか、長年すっかり共に過ごした立場であった。今まで本当にありがとう。その悲しみと虚しさが流れゆく時間と共に増していく、そんな気配も感じつつ、ぼんやり食後のレモンティーを口につけている現在進行形アンニュイヒューマニストのぼく。
もう前々から予兆は出ていたので覚悟こそできてはいたが、いざ訪れるとなんともいえない心の行く末。あっ、こんなノリなので当然生あるものの話ではありません誤解なきよう。代わりは無い…というのは単なる嘘だが代わりに飛び移れる力がないため、実質無いものと同義の手も足も出せない貫禄の印籠。相場が良くも悪くも動かねぇんだ。
今の私、もう少し悪あがきをしてもよろしいか。出来るか出来ないかでは無い、立ち向かうのが我が宿命なのだと、何の力もないくせにポリシーだけはこびりついている男の本性がいまここに誕生するのかもしれない。わざわざ言うことでもないのかもしれないが、個人的やんごとなき事情もある。さようなら一言で済ませられるような関係ではないのだ。
しかしここで問題がある。力を得るために必要な力を得る段階でもない、なんとも情けない場所にいる問題がある。例えるならば、新しい服を買いに行くために着ていく服がないなぁと思っていたらそもそも外に出られる顔面すら持ち合わせていなかった、といった感じである。何かしら代用が効くものがあるのならいいのだが、ないと話にならんものなのでまずはそこをどうにかしないといけない。最初に鍵を入手して扉を開ける以前、まずは家から出て城へと向かうところから物語は始まっている。自分はまだ箱の中にカセットが入ったままの段階である。説明書帰ってきて。
あれとそれとこれと…ううううむ、はたして自分如きが立ち向かえるのか、ぐうううことあるごとに己の無力さが傷をえぐっていく。徐々に深みを増し最初は鋭利な感触であったもの、それが段々と脳への伝達をも鈍らせていく。そんな傷跡なんぞとっととかさぶたにでもなってくれればよいものを。